朧月夜に愛
午後十一時、ポツポツと立っている街灯の灯りが足下を照らす田舎道で、空を見上げながらそんなことを思った。
「空に何かあるの?」
ふと静寂を壊した高めのソプラノ。隣にいたその声の主が、上を見上げながら歩く僕にそう問い掛けた。
「…うん。雲と、星が」
僕の答えに、彼女はクスクスと笑いを漏らす。
まるで、また始まったとでも言うように。
「そう、素敵ね」
彼女は歌うように言葉を返す。
その声がとても好きだということを、彼女に言ったことはないけれど。
心地よいから。
「上ばかり見てると転ぶわよ?」
「……うん」
もっと、うたって。