虎目石の瞳に射抜かれて。
.+*虎目石の瞳*+.
時折、澄んだ冷たい風が火照ったわたしの頬をなぜる。
小鳥たちの可愛らしいさえずりが力強い腕に包まれているわたしを眠りから覚醒させた。
閉ざした瞼をゆっくり開けると、目前には最愛の男性。
つり上がった凛りしい眉に、流れるような鼻筋。
頑固さをあらわしている、への字に曲がった大きくて分厚い唇と二つに割れた顎。
後ろへと邪魔そうに流した漆黒の髪は夜の事情を促しているように少し乱れている。
その姿さえも美しい。
男らしい彼を背後から包むようにしてレースのカーテン越しから真っ白い柔らかな光が差し込んでいる。
そんな彼は美しくも力強い大天使ミカエルのようだ。
あまりにも人間離れしている目の前の男性を見つめていれば、閉じていたわたしの唇はいつの間にか弧を描いてしまう。
それを見計らったかのように、長い睫で覆われた彼の瞼がゆっくりとひらいていく……。
同時に、揺るぎない決意を持った虎目石の瞳が微笑むわたしを映しだした。
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