最カノ[短編]
最カノ


 ええっと……。

 今の聞き間違いかな? うん、そうだよな、絶対俺の聞き間違いだ。もしくはいつもの俺の妄想癖だ。だってどう考えてもさ、会話の繋がりがおかしいもんな。
 俺、今、心菜に「最近おまえも随分生意気なこと言うようになったよな」って言ったんだったよな確か。うん。


 心菜とはもう一年以上の付き合いになる。去年、俺がクラスメートだった心菜に夏休み突入直前に告白した。長い夏休みに入ったら、こいつをからかうことが出来なくなるのかと思ったら、妙に寂しさを感じてしまったからだ。
 心菜は見た目もそうだけれど、どこか全体的にほわんとしていて口調もさることながら全てにおいてゆったりしてるような女の子だった。俗にいう癒し系というやつになるのだろうか。

 俺は昔からどっちかと言えば、しっかりした姉御肌のような女の子より、守ってあげなくちゃなんてつい思ってしまう天然妹タイプのような女の子が好みだった。まさに心菜は後者で、俺のストライクゾーンど真ん中。
 それに俺がちょっかいをかけたりからかったりする度に、心菜は透き通るような白い肌を、桃のように可愛らしいピンク色に染め、頬を膨らませたり恥ずかしそうにしたりと、いちいち彼女の見せる反応に俺はもうたまらなくなっていた。それは今も変わらない。


 けれど、そんな心菜が最近になって急に、なんというか反抗期を迎えた子供のように、俺の言うことに反論するようになってきた。さっきもそうだ。



< 1 / 10 >

この作品をシェア

pagetop