最カノ[短編]
 確かあれはある晴れ渡った日曜日の出来事。
 太陽の光がサンサンと降り注ぐ中、二人で仲睦まじく街中をぶらつきながらデートしてる最中だったように記憶する。まさに爽やかカップルの象徴のように。(個人的にはここを強調したい)


「軍曹さ〜ん! 僕、お腹すいたですぅ〜〜」
 腕を絡めながら俺の横で、心菜が唐突に言った。楽しそうな顔をして。

 ……タ○マか? ケロ○軍曹なのか?

 キャラクターの名前を当てたからといって、別に俺がケロ○軍曹のファンというわけではない。どちらかと言うと俺は涼宮ハル……、いやなんでもない。
 ただその何日か前に心菜と一緒にケロ○軍曹のDVDを観たからわかっただけだ。いや、正確に言えば付き合わされたのだ。何時間も延々と。
 うら若き男女が部屋に二人きり、やることはもっとあるじゃないかと俺は一人悶々としながら。いやあれは悶々を通り越して、ムラムラ域に達していたように思う。

「あー、じゃあなんか食い行くか」
 こいつに飲まれてはいけない。俺はそう思い、敢えて至って普通に答えた。
「今日の軍曹さん、なんだか変なしゃべり方ですぅ〜〜僕のこと嫌いになったんですかぁ〜?」
 すると心菜が恨めしそうな顔を俺に向けた。

 いや……、別にケロ○が嫌なわけじゃないんだよ。
 たださ、俺にもプライドっていうかさ。俺、ここでケロ○になっちゃってもいいのか? 的な疑問が頭ん中で飛び交ってるっていうか……。



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