Material Boy
牧口さつきは、

企画室に戻って、身の回りの荷物をまとめていた。

唇をかんで、

なんで、こんなことになっているのだろうと、

さっきのやりとりを思い返していた。

鮎川野乃、彼女を見くびっていたのが敗因だった。



確か、海外営業部にいたときは、言われた仕事だけ黙って

こなしていただけ、メガネで地味で、まるで空気みたいな子だった。

ただ、ぼんやりした子だと思っていたら、

突然企画準備室に異動になった。

お嬢様のお世話係になったともっぱらの噂だったのに

社長直属の部署になり、大きなプロジェクトも

任せられるような主任に格上げになるなんて、

信じられない出世だった。




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