Material Boy
「あら、もうお帰りだったんですね?」


「浜さん。」


「アメリカどうだったんですかあ?

 いいなあ、あたしも行きたいなあ。」


「浜さん、私辞めることにしたから、

 あの鮎川って主任には気をつけたほうがいいわね。

 じゃ、失礼するわね。

 そうそう、

 辞表は郵送で送りますって言っておいて。」


「は、ええと?そうですか、はいお伝えします…。」


捨て台詞を残して、皐月は企画室を出ていった。

浜貴子は、突然言われたことに対処できず、ポカンとして、

彼女を見送った。


ビルのエントランスを抜けたところで、

さつきは一度だけ振り返り社屋を見上げた。


『フン、元々こんな小さな会社には興味がなかったのよ。

 ただのステップアップだけのために入ったようなものよ。

 今回のアメリカの出張で、多少の収穫もあったし…』



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