Material Boy
「さあ、入ってください。」

その人は、なんとさつきの父親だった。

「あの、でも私…」

「いいんですよ、あの子は友達とか全く連れてきたことなくて

 本当によく来てくれました。」

「でも、私は、友達とかじゃ…」

そう言いかけた時、心配そうな娘の顔をした

さつきが出てきた。


「お父さんったらこんな夜中にどこに行ってたの?

 何かあったらどうする……鮎川さん?」

一瞬にして顔を曇らせた。

「お友達だろ?上がってもらいなさい。」

「ああ、あの私は…」

「上がって頂戴!」

「え?」

表情はこわばっているのに、

さつきは野乃を招き入れた。

そして、耳もとで小さな声で、

「今日のことは言わないで…」





 
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