Material Boy
「鮎川さんその方は?」

「すみません。」

牧口の言葉を遮って、

野乃はス-ツケ-スを引く遥火の後ろ姿を慌てて追いかけた。

広い背中、ス-ツの上からも分かる均衡のとれた

バスケットボ-ル選手のような体格が、

朝のビルのロビ-で眩しく見えた。

(この人もしかして、凄くカッコいい?)

それはすれ違う社員達も皆感じているようだった。

《いったい誰??》

そんな視線も気にすることなく遥火は、野乃に声を掛けた。

「おい、早く案内しろ。」

「はい、3階です。エレベ-タ-はこちらです。」

 集まる視線を感じつつ野乃は遥火の前に周りエレべ-タ-へと案内した。

朝の通勤時のエレベ-タ-は満員電車のようで、息苦しい。

しかし、今日はいつもよりも野乃の周りの空間が広い。

ス-ツケ-スが足元にあるためと、遥が壁に腕を押しあてて、

野乃に空間を作っていたからだ。

(さすが、レディファ-ストの国にいた人ね。やることがスマ-トだわ。)

感心して見上げると、遥火も野乃を見ていてばちっと目があった。

その瞬間、3階到着のチャイムが鳴り、人の流れとともに外へ押しだされた。


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