Material Boy
3月某日、
「企画準備室?。」
係長から辞令を渡され、新しい配属を知らされた。
「そんな部署があったんですか?」
係長は、渋い顔をして、低い声で言った。
「新設の部署だ、大変だと思うが頑張ってくれ。」
野乃は腑に落ちなかったが、新設という言葉に、心が揺れた。
自分達が立ち上げると言う作業はやりがいがある様に思えた。
「はい、頑張ります。」
恭しく事例を受け取り、引き継ぎの準備を始めた。
野乃の後ろ姿を見ながら、
係長の種島明(たねしま あきら)はため息をついた。
【かわいそうに、副社長の娘のお守役をさせることになるなんて、
良く気がつくしっかりした子なのに、社長の直々の指名だ、
どうにもならない、許せ、鮎川。】
野乃の、配属先を愁いた。