Material Boy
わが社の社員用宿舎は、社屋ビルを管理している、系列の不動産部で、
余った物件を間借りしている。
したがって、必ずしも皆が同じ場所に住めるわけではない。
野乃の隣の部屋は半年ほど前まで、他社のOLが賃貸していたらしいが
結婚して解約してからは、ずっと空き部屋になっていた。
今朝から。遥火にやられっ放しだった事を思い出して、
悪戯心がちょっと動いてしまった。
「そう、あの部屋に入るの。」
「は?」
「勇気あるのね。さすがだわ。私だったら絶対に嫌だもの。」
「な、何でそんなこと言うんだ。」
「出るのよ。あれが。」
「あれって、、、」
「聞きたいの?聞いたらあの部屋で眠れなくなるんじゃない?」
野乃は、固まっている遥火を見ながら、
笑いが込み上げるのをこらえていた。