Material Boy
室長の鳴海いちごは、

背が低くあどけなさは残るが、ハッとするほどの美しい容姿をしている。

彼女がそこにいるだけで、華やぐそんなオ-ラを持っている。

頭も恐ろしく切れ、

野乃の提出する企画書を的確にアドバイスして

完璧に作りかえる不思議な能力を持っている。

室長のそんな一面を知るのは、野乃と社長ぐらいだろう。

野乃は社長を尊敬している。

社長に憧れてこの会社に入ったと言っては過言でないだろう。

初めて社長室に呼ばれたのは、

この部署に配属になって1週間ほどたってからだった。

社長室に入ったのはこの時が2度目だった。

社長は自ら注いだコ-ヒ-を野乃に勧め、

この1週間の様子を熱心に聴きたがり、

野乃は、失礼ながらと準備室の存在意義を理解しかねている事を話した。

社長は、一頻り頷いて話を聞いた後、

準備室は鳴海いちごという人材を、社長として育てるために

存在しているのだと明かしたのだ。




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