Material Boy
「ねえ?ちょっと気になってるんですけど?」


「え?何が?」


「誰に日本語教えてもらったの?牧師さん夫婦じゃないわよね、

その言葉づかい。」


「ああ、養父母にも教えてもらったけど、基本は友だちじゃね?」


「友だち、そんな言葉使ってたの?」


「いわゆる不良仲間ってやつ?

 学校じゃ言葉もろくにしゃべれねえ、目つき悪いではじかれてて、

 付き合ってくれるやつなら誰でもよくて、

 俺が分からないこと根気強く教えてくれて、

 あいつらには感謝してんだ俺。」



「そう、運がよかったじゃない。」


そうよね、一生のうち、  

感謝できるほど親しくなれる相手がいるだけこの人は幸せだわ。


私は、上辺だけの付き合いしかしてこなかった。


この年になって残っているのは、ほんの少しの自尊心と体面を繕う術。


それが大して意味の無いことだということは


この人を見ていると感じざるを得ない。
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