*扉の向こう側
とりあえず案内された席に
知香と座る。
ごゆっくりどうぞ。
そういって微笑んだ店員さんから目が離せない。
そうしてたらふと目があってしまい
気まずくてあわてて目をそらした。
ぱっと目に入ったのは
ネームプレート。
オシャレな文字で書いてあったのは
Toma Kasuga
かすが…とうま……?
春日さんが奥に戻ると
私は知香に早速話を始めた。
「ねぇ…さっきの店員さん…」
「…あぁ。かすみのタイプっぽいよね」
知香はにやにやしながら水を口に含む。
「うん…やばい!一目ぼれかもしれない……」
「…。」
「知香?」
「深入りはしちゃダメだよ。」
「当たり前じゃん!向こうは大人、こっちは女子高生…
相手にしてもらえるはずないって分かってるし……」
「深入りして傷つくのはかすみなんだから…」
ここまで言っても心配してるのか
知香は何度も私を説得する。
「分かってるって!!眺めるだけだしっ」
「それなら、いいんだけど…」
まだ、納得はしていない知香に
大丈夫!ともう一回言って釘を刺した。
大丈夫。
深入りなんてしない。
みてるだけ。
みてるだけで十分だもん。
本気の恋なんて……
絶対にしない。