うさぎ と くま の物語 (完)
 

窓の外から、きゃぴきゃぴした声が耳に入ってきた。


ここ柔道場内は外からよく見える。


毎日のように、外にはギャラリー…女の子の群れがいるんだ。


窓の外に向かって、更衣室に向かおうとしていた佐崎センパイが笑顔で手をヒラヒラと振る。


その途端、響き渡るキャーっという甲高い声。


……みーんな佐崎センパイ目当てだ。


どこでも何をしても目立っちゃう佐崎センパイには、ファンの女の子がたくさんいる。


おかげで、柔道部はいつも賑やかなんだ。


満足そうな表情で佐崎センパイが更衣室の方へ去っていく。


それに反して…


「…うるさいし」


梨乃センパイが険しい顔をして、チッと舌打ちをする。


美人さんがそういう顔をすると…迫力ある…。


これが佐崎センパイへの苛立ちなのか、ファンの子たちへの苛立ちなのかは、定かではないけど。


どちらにしても、佐崎センパイが関わっていることには変わりないんだよね…。

 
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