うさぎ と くま の物語 (完)
梨乃センパイは顔を横に向けて、機嫌が悪そうにその声に応える。
・・
「何よ、クマ太郎?邪魔しないでよ」
「……その呼び方、やめろよ…」
はぁ、と聞こえるため息。
私が得られるのは、二人のやり取りの声だけ。
―――私も話に混ざりたいよぉぉ!
私は梨乃センパイの胸の中から脱出しようと試みる。
でも、梨乃センパイの腕の力は緩まない。
「ていうか、そのデカイ図体であんまり暴れないでよ。ここ壊れたらどうすんの」
「俺、暴れてたか?いや、投げ飛ばしてはいたけど」
「呆れたっ!これだから、クマはっ」
梨乃センパイの腕の力が、ぎゅっと強くなる。
むぐっ!
む、無理~!
苦しい!
「り、梨乃センパぁぁい」
「あ、うさぎっ!忘れてたっ!潰すとこだった!」
パッと、梨乃センパイの腕の力が緩んだ。
ぷはっ!
私はやっとこさ解放される。
と同時に、視界に入ってくる大きなシルエット。