こんなかたちではじまる恋
「シャワーありがとう…ございました」



自分自身を落ち着かせるように、綾野に言った。


「こっちにかけたらどうですか」



綾野に促されてあたしはイスに座る。



「月島さんは、コーヒー苦手でしたよね」



綾野はそう言ってあたしにオレンジジュースを用意してくれた。
綾野にコーヒーが苦手だと話したことはなかったのに、それを知っていてくれたことに不覚にもドキッとしてしまった。



それにしてもこうして綾野と向かい合って、綾野はコーヒーを、あたしはオレンジジュースを飲むのはとても違和感を感じる。



「昨日はご迷惑おかけしました。」



沈黙に耐えきれずあたしは口を開く。



「別に構わないですよ」


綾野はこちらを見ずにそれだけ言うとコーヒーを一口飲んだ。



「昨日のことは、綾野もわかってる通り…恥ずかしいけどあたし全然覚えてなくて。…あたし忘れるから綾野も忘れてください」



あたしはそう言った。



「あんなことしたのに忘れろって言うんですか?」

「そのほうが、あたしにも綾野にとってもいいかなって思って」



すると綾野は立ち上がってこっちに来た。
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