こんなかたちではじまる恋
もっと強引に押して、俺の物になれ!と言いたかったけど、いつもそこまでできなかった。



貴女は気付いてないだろう。
でもわかるんだ。



時々見せる貴女の顔は、まだあいつを想っていた。



社員旅行のあの時も、こうして食事している今も。



それに気付いてしまうと、もう何もできなかった。
まだあいつを好きだと言われているようだったから。






タイミング悪くあいつに会ったとき。
貴女の手が震えてた。



『あたしは落ちこぼれだから』



酔っぱらってる貴女はそう言ったけど、ずっと我慢してたんだなと思う。
貴女のことを見てきたんだからそれぐらい分かる。



まるで子どものように泣き出す貴女を見ていると、俺も胸が締め付けられるようだった。



俺が思ってる以上に、貴女のあいつへの想いは大きかったことを思い知らされる。




(好きだなんて言えねーよ)




俺は貴女のそばにいるしかできなかった。
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