こんなかたちではじまる恋
綾野はあたしの首筋に唇を這わせる。
あたしの気持ちとは逆に体がピクッと反応する。
そんな自分に腹が立つ。


彼氏に振られて、綾野と一夜を過ごした。
そして今、綾野に押し倒されている。



あたしはこんなオンナだったのか…
だから、彼氏も他にカノジョがいて、そっちを選んだ。



そんなことが頭をぐるぐる巡る。
自分の気持ちがコントロールできない。





「…すいません。度が過ぎました」

「…え?」

綾野はあたしの首筋から唇を離した。

「そんなにボロボロ涙流されたら、これ以上のことできないでしょ」

綾野に言われて自分の頬に手を当てる。
確かに頬は濡れていた。
いつの間にかあたしは泣いていた。



「はい」



テーブルに寝たままのあたしに綾野が手を差し出す。
あたしはそれを無言で掴んだ。
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