こんなかたちではじまる恋
本当は綾野になんて送ってもらいたくはないが、あのまま綾野の家にいる方が地獄だ。
ひとりになって、いろいろ気持ちを整理したい。


教えたくないけど住所だけ告げると、あたしは黙った。
綾野はナビに住所を打ち込んだ。
そして車を発進させる。
普段電車で通勤しているから、綾野が運転できるなんて知らなかった。



あたしは綾野に話しかけられるのが嫌だったので窓の外の流れる景色をぼんやり見ていた。
そんなあたしの気持ちを知ってか知らずか、綾野も一切話しかけてくることはなかった。



「…ありがとう。ここでいい…」



あたしの住んでいるマンションの付近で車を止めてもらった。



(これでやっと解放される………)



そう思ってシートベルトに手をかけた時だった。
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