こんなかたちではじまる恋
再会
あの日のことや社員旅行の出来事が嘘だったかのように、綾野とあたしは必要最低限のことでしか関わることがなかった。
でも、それでよかったんだ。
もともとあたしたちは何にもあるわけのないはずなんだから。




「月島さん、時間ありますか?」




パソコンで社長に頼まれていた月例報告書をまとめていると、綾野に声をかけられた。



「それ、急ぎですか?」

「ううん…提出期限はまだ先だけど」

「そうですか。じゃあ少し俺の仕事手伝ってもらえますか?」

「わかった…」



仕事は仕事だから、断るわけにいかない。
珍しく仕事がたくさん舞い込んできてみんな他人をサポートするほどの余裕がないのは十分感じていた。



「ちょっと出るんで、用意できたら声かけてください」



(外、出るんだ…)



「わかったわ」



まさかとは思うけど、相手が綾野なだけに本当に仕事で外出するのかと疑問に思ってしまう。
だけど引き受けてしまったのだから今更逃げるわけにはいかない。



手早く用意をして、綾野に声をかけ、会社を出た。
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