こんなかたちではじまる恋
「だけど月島さんは帰りたくないってだだこねるし、住所聞いても教えてくれないし。雨も降ってきてお互い濡れたので仕方なくうちにつれて帰ってきました。」

「そっ、それはご迷惑おかけしました。」

「ほんとですよ。月島さん彼氏に振られたって泣き出すし…」




思い出したくないことを思い出した。
あたしは、昨日二年付き合った彼氏に振られた。
それで、会社の近くのバーでひとり飲んで…。



(そっか…あたし振られたんだ)



さっきまでのふわふわした感覚が、だんだん薄れていく。



「あとは、この通りです。」



少し意地悪そうに綾野が笑う。



「この通りって…」



綾野がベッドから起き上がる。
服を着ていない。
まさかと思い、布団の中の自分の体を覗く。



何にもつけていなかった。



「俺、シャワー浴びてきますから」



恥ずかしげもなく綾野は起き上がる。



「ちょっと…!早く向こう行って」



あたしは思わずそっぽを向いた。



「今更恥ずかしがらなくても。夕べはあんなことしたのに。…いろいろ楽しませてもらいましたよ」



そういうとベッドルームの扉がパタンと音を立てて閉まった。
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