こんなかたちではじまる恋
「よく営業の方は現場に来てくれるんですよ」



あたしの後ろで声がした。
振り向くとベテランと言ってもいい風格のあるおばさんが立っていた。



「自分たちが扱ってるものを自分たちがわからなかったら意味がないからってねぇ。本当にすごい人たちだよ」



おばさんの言葉に、営業部の人がそんな努力をしていたのだと初めて知った。



「特に、あの…綾野くんだっけ?あの人は時間を見ては頻繁に顔を出してくれてねぇ。たまにはああやって作業を手伝ってくれるんだよ」



おばさんが指差す方向をあたしもつられて見る。
Yシャツを腕まくりして、作業をしている綾野がいた。



「おっと。班長さんにバレたら怒られちゃう。おしゃべりはここまでだね。お姉さんもお仕事、頑張ってね」



おばさんはそう言うと持ち場へ戻っていった。




綾野が成績トップ3を争う理由が、ちょっとだけわかった気がした。
いつもは嫌な部分しか見てなかったけど、こうやって綾野は努力してるんだと思うと、嫌なところばかり見て綾野という人を決めつけてた自分が少し恥ずかしくなった。
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