こんなかたちではじまる恋
綾野のオススメのお店に連れて行ってもらい、普通に食事をして普通に会話を楽しんだ。


綾野には兄弟がいることや、大学時代の話。
たくさん聞いた。



あたしたちの間にはこういう普通のことがあまりにもなさすぎた。



綾野は自分の話も、あたしの話もうんうんと聞いてくれた。
これがもともとの綾野の姿なんだと思う。
あたしは綾野の中の強引な部分だけしか知らなかったし、今まで知ろうともしなかった。
きっとあの日のことがなければこうやって食事をすることすらなかったかもしれない。




ふと、こうやって彼氏以外の男性と笑いあえる自分に驚いた。
ついこの間まであんなに考えていたのに。




「そろそろ出ましょうか」




綾野はそう言って伝票を持って立ち上がった。
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