こんなかたちではじまる恋
「そんなに浸からなくてもいいじゃん」



と綾野が言うほど、あたしは湯船に首まで浸かっていた。



「髪、アップにしてもかわいい」



バッグに入っていたクリップで適当にまとめた髪を綾野が誉める。
なんだか照れくさい。
だからあたしは綾野に背を向けた。



「さやかって小さいよね」

「綾野がデカいだけじゃないの」

「全部、かわいい」



そう言ってうしろからあたしを抱きしめた。



普段はこんなことしないのに。
一緒にお風呂に入ってるから?



「さやかドキドキしてる」

「き、気のせいじゃないかな」

「だってさやかの背中からでもドキドキわかるよ?」

「お風呂のお湯が熱いからじゃない?」

「素直じゃねーな!…俺もドキドキしてるよ」

と綾野はくるりとあたしの向きを直すと綾野の胸にあたしの手を当てた。
確かにドキドキしている。
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