こんなかたちではじまる恋
(そういう人がいるなら言ってくれればよかったのに)



綾野の隣には、女の子がいた。
横顔しか見ていないけどお人形さんみたいな子だった。
あの日の記憶と、今の光景が重なる。



綾野と女の子には、ずーっと前からお互いを知っているかのような、そんな自然な空気が包んでいた。



そんなの見てしまったら、声なんてかけられるわけがない。



あの日のように、泣きそうな気持ちであたしは自宅に帰る。



それを見て以来、あたしは綾野の部屋に行くことはなかった。
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