いちごみるくちょこ
「なんだか少ししんみりしちゃったわね!
窓開けるねー。」


そういって秋波さんは大きく窓をあけた。


そのとたん風がはいってきて楽譜がピアノの下に舞い散った。


「あッ…」


「あらあ…やっちゃったわ…。」


わたしはしゃがみこんで楽譜を拾い始めた。


ピアノの鍵盤のしたのほうにも落ちていて手を伸ばすとそこには何かが彫ってあるような傷があった。


「これ…って……」


よく目をこらして見てみた。

間違いない。

このピアノは…


わたしはある昔のことを思い出していた…








「お母さんー!
ピアノに傷ついてるよ??」


当時ピアノを習っていた中学生一年生のわたし。


「あーペダルの少し上にあるのじゃない?」


「そうそう。
昔からあるの?」


そう訪ねるとお母さんはおかしそうに笑い出した。


「ふふ…そのピアノね?永愛のお父さん、大輔に買ってもらったものなんだけど…新品ですっごい高かったはずなのに…」


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