HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
「ち、違う! 電車が……」

「ああ。もう行っちゃった?」

「……もう間に合わないわ」

 舞は相当がっかりしたらしく切ないため息をついた。

 すぐに俺はいいことを思いついた。母親に感謝しなきゃな。

「じゃあさ、お昼一緒に食べない?」

「へ?」

「駅の近くに美味しい定食屋さんがあるんだけど、どう?」

「定食……」

 そういうのは好みじゃないか。でもファーストフードとかファミレスだと学生が多いからいろいろと面倒だしね。俺はどこでも全然かまわないんだけど。

「どうせ電車しばらくないんでしょ?」

「よくご存知で」

 ま、それくらい当然予備知識として既にリサーチ済みだから。

「じゃなきゃ、あんな大声で電車に乗り遅れるのをがっかりしないんじゃ?」

「さすが、学年一番」

 ――へぇ。舞も言うね。

 彼女のちょっとした嫌味が不思議と嬉しかった。だってそれって俺に少し慣れてきたってことだし。 

「で、どうする?」

「でも私なんかと一緒だと迷惑じゃ……」

 ――ふーん。やっぱりそうか。

「高橋さんって、俺のことそんなに嫌いなわけ?」

 俺は舞が気後れしなきゃいけないような人間じゃない。むしろ……

「……嫌い」

 一瞬、その言葉がグサリと胸に突き刺さった。
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