HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
「えー!? ホントに?」

 英理子が手を口に当てて信じられないものを見るような目で寛人を見た。寛人は一同の視線を浴びて小さくなる。

「だ……ダメかな? でもすごく性格がよくて、写メ送ってもらったけど顔もけっこうかわいいし」

 寛人の説明によるとたまたま同じギルド(ゲーム内のグループのようなものだそうだ)で仲良くなった女の子が、偶然にもS市に住んでいてそれがきっかけで更に親密になり、ゲーム内で付き合っているらしい。

「それってゲームの中だけでリアルは別なんじゃないの?」

「そんなことはない……と俺は思ってるけど」

 なんだよ、焦ったじゃないか。だいたい俺に彼女がいないのに、コイツに彼女ができるなんておかしい話だ。

 英理子もがっかりしたようで寛人への尋問はそこで終わった。そして急に意味ありげな笑顔を浮かべて俺の向かい側に移動してきた。

「はるくん、何か良からぬことを企んでるでしょ?」

「良からぬこと? 何のことやらさっぱり」

 俺はとぼけてウーロン茶を飲んだ。英理子の顔を見ていると心の中を見透かされそうな気がして怖い。

「何かあったの?」

 今まで黙って聞き役に徹していた遠藤さんが口を開いた。遠藤さんは英理子の彼氏だ。彼は既にこの宴会の常連なのだ。

 彼がこの宴会に初登場したのは二人が付き合い始めてすぐの頃だった。特に俺の母親が「皆に紹介して」と英理子にしつこく頼み込み実現したのだ。それ以来、遠藤さんは特に用事がない限り、必ず宴会に参加するようになった。

 他の家庭の親戚付き合いを見たことがないから自信はないが、それにしても我が家は異常だと思う。

 こんなふうに親戚公認の付き合いだと英理子も遠藤さんも簡単に別れるわけにはいかないだろう。

 今のところ別れそうな雰囲気は全く感じられないが、この先何が起こるかはわからない。英理子はまだ俺と同じ高校生だ。遠藤さんが大人だから上手くいっているのだろうが、このまま結婚まで続くかどうかなんて誰にも予想できやしない。

 それにしても、だ。

 たまたま遠藤さんはウチの親戚にアレルギー反応が出なかったからよかったが、この雰囲気についていけないと思う人間は少なくないと俺は思う。

「英理子が何のことを言ってるのかわかんない」
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