HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
#20 俺の気持ちを君に伝えよう(side暖人)
 翌朝、珍しく学校に早く着いた。本当に朝が苦手だったのを克服したのかもしれない。

 何となくそわそわしながら教室でマンガを読んでいると、舞がいつもと変わらない様子で登校してきた。いつもながら、空気のように存在感が薄い。

 顔を上げてできる限り自然な態度を心がけて挨拶をすると、舞は仕方ないというように俺を見た。

「おはようございます。もう元気です」

 元気だという割に、舞の返事はか細い声だった。本当に大丈夫なのか?

 しかし会話のきっかけがあるというのはいいことだ。俺は調子に乗って更に話しかける。

「滅多に休まないのにどうしたのかなって心配だった」

 途端に舞が俺をじろっと見た。

 ――え? 俺、なんか変なこと言った?

 一瞬不安になるが、別に変なことは言っていない……ハズだ。

 なのに、なぜか舞の顔が急にぼーっと赤くなる。

「ちょっと、大丈夫? まだ熱あるんじゃない?」

 舞は大丈夫だと言うが、明らかに顔が上気し、何やら辛そうだ。

 ――いや、これ、熱あるでしょ。

 俺は心配になって舞の額に手を伸ばした。



「…………!!」



「ごめん」

 俺は慌てて手を戻す。舞の顔が不自然に歪んで、また泣かせてしまったのかと焦る。

 とても悲しそうな表情だったが、舞は泣いているわけではなかった。どちらかというと困惑……いや、迷惑しているような様子だ。

 というのも、その後あからさまに俺を避けるように隣の席に腰を下ろして、これでもか、というくらい背を向けて窓の外を見ている。
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