HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
 先生も含めてクラス中の視線を一気に受けて、私はどこかに消えてしまいたいくらい恥ずかしかったが、痛みとショックで間抜けな格好のまま腰が立たなくなってしまった。

「ごめん、立てる?」

 ソイツは私が立ち上がれないことに気が付き、手を差し伸べてきた。でもまだ目が笑っている。

 私は自力で何とか椅子に座った。もう意地でね。

「高橋、どうした?」

 先生が驚いた顔で近づいてきた。そりゃ驚くだろう。居眠りしていたとしても授業中にいきなり椅子から転げ落ちる生徒なんか滅多にいない。

「先生、すみません。僕がからかったせいです」

 私が言葉を発する前に隣のソイツが言った。

「高橋さん、ごめんね」

 私は猛烈に腹が立っていた。

 そういうことか! 私を笑いものにして楽しいか!!

 先生はソイツの言葉に納得したのか、すぐに踵を返し授業に戻った。クラスのみんなは何となくヒソヒソと私のことを話しているようだ。気分が悪い。

「……怒った?」

 私はソイツの言葉を無視した。これで怒らない人間がいるか!?

「ごめん。本当は忠告しようと思ったんだ、『落ちるよ』って」

 ……それはご親切にどうも! 落ちてから言われても遅すぎるけど!!

「だって高橋さんが俺のこと避けるから」

 ……え? 何? 私が悪いとおっしゃるんで??

「ちょっと傷ついたな」

 ……はい? 被害者は私ですけど?

「そんなに俺のこと嫌いなわけ?」

「嫌いです」

 私は反射的に言った。
< 17 / 164 >

この作品をシェア

pagetop