HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
 昼休み後の2時間はいくら先生の話に集中しようと思っても頭がボーっとして無理だった。相変わらず板書を読んでくれる清水くんも、しばしば私の手が止まるので訝しんでいたと思う。

 そして放課後。

「高橋さん! 一緒に帰りましょう」

 本当に英理子さんが私の教室までやってきた。なにごとかと周りのクラスメイトが好奇の目で私たちを見ている。けれども英理子さんは全くそんな視線は気にせず、鞄を持った私を引っ張る。

「あの、英理子さん。一緒に帰るのは私とじゃなくて清水くんの間違いじゃ?」

 私は小声で言ってみる。よくわからないけど、もし私が二人の邪魔をしているなら申し訳ないと思ったのだ。

 英理子さんは私の顔を正面からまじまじと眺めた。そして「ああ、そういうこと」と何かを一人で納得したようだった。

「ま、いいから一緒に帰りましょ。そうしたらわかるから」

「何が?」

「ウフフ。いろんなことが、ね」

 ……「ウフフ」って、何だか怖いですが!

 こうして私は英理子さんと駅まで一緒に帰ることになった。思えば、こんなふうに女の子と一緒に下校するなんて久しぶりだった。

 土曜日の「人さらい事件」について英理子さんから聞かれることを答えながら、私は彼女を密かに観察する。小顔なのにとにかく目が大きい。女の私でもじっと見つめられると恥ずかしくなってしまうほどだ。

 昼休みに清水くんに告白していた1年生の女子も美人だったが、英理子さんはそれ以上にかわいいかもしれない。
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