HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
 我がクラスは1年の頃から席替えをくじ引きで行うのが慣例になっていた。

 そうそう、うちの学校は1年と2年は持ち上がりで3年になるとコース別にクラス替えがあるのだ。だからこの席替えは既にマンネリ化したクラスメイト達の毎月の楽しみでもあった。

 私にとっては毎月のやっかいな行事だったけど。

 そんな私の目の前に突然箱が差し出された。

「高橋さん、引いてよ」

 呼ばれて私ははっとする。クラスメイトに名前を呼ばれたのも久しぶりでびっくりした。

 丸くくりぬかれた箱の穴に手を突っ込むと四つ折になった紙の感触。

 どうせどこの席になってもいつもと何も変わることはないのだし!

 と、適当に選んだ紙を開くと『16』と書いてあった。

「はい、高橋さん、16ね」

 箱を持ったクラス委員が黒板で書記係の女子に伝える。

「ええーーーーーーーーーーっ!!」

 途端に男子からも女子からも声が上がった。

 私はきょとんとして黒板を見る。

 ああ、左一番後ろ。一番人気のある席だ。

 突然後ろから肩をがしっと掴まれた。

「高橋さん、一生のお願い!」

 後ろの席の女子が真剣な顔で私に手を合わせている。

「席、替わって!!」

 いつもなら快く交換するところだけど、一度一番後ろの席にも座ってみたいと思っていたのだ。

「えっと、今回はごめん」

 丁重にお断りした。

 他の女子からも頼まれた。

 みんなそんなに後ろの席がいいのね。居眠りできるし、内職できるし?

 それでも今回は全部丁重にお断りした。

 だってそんなラッキーな席を自分で引いたんだもの!

 女子は普段から親しくない私が拒否すると、それほど食い下がってはこなかった。そりゃまぁ、そうでしょ。親しくない人に断わられて「それでも!」っていうのは相当図々しい。

 私は自分の荷物をまとめて、左一番後ろの特等席へ向かった。

 そういえば、このクラスは高校だというのに小学1年生のように男女が隣り合わせで机を並べている。

 あれ? そういえば隣の人は……

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