HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
#09 こんなものがあるからいけないんです。
 二人っきりという状況は案外あっさりとやってきた。



 いつも通りに登校した私の机の上に「日誌」なるものが乗っかっていた。

「今日、日直だね」

 私の後から登校してきたらしい隣の席のソイツが、私の机の上を見てそうひとこと言った。

 黒板を見ると「日直:清水・高橋」と書かれている。



 ――うわぁ! 心臓に悪いよ!!



 と、心の叫びは心の中だけにとどめておくように努力しながら、私は日誌を隣の机の上にすうーっと移動させた。

 ちらりと私を見た清水くんは、私がやったのと同じようにすうーっと日誌を押し戻した。

 ……日誌書くのって面倒なんだよ?

 そう思いながら小さくため息をついた。すると清水くんがニコッと笑って、小さくガッツポーズを作った。くうっ! 負けた……。

「その代わり黒板消しは任せてよ」

 と言って清水くんはまた綺麗な笑顔を見せた。

 考えてみれば黒板消しのほうが嫌な仕事かもしれない。チョークの粉が制服にかかるのがやっかいだし、背があまり高くない私には上のほうを消すのが大変だったりする。

 もしそれを知っていて引き受けてくれたのなら、もしかして清水くんってものすごく優しい人なのでは? もしかして、わ、わ、私のためにわざわざ嫌なことを引き受けてくれたとか……!?

 ――……ないない。ありえない!

 ああ、もう!

 こんな些細なことですら、いちいち彼の行為の意味を考えて一喜一憂する私はバカだ。そんなことにいちいち深い意味などあるはずない。

 そもそも私はたまたまくじ引きで清水くんの隣に席になっただけで、彼が私を構うのは今まで彼の周りにいなかったタイプの人間だからで、他意などあるはずもないのだ。

 だいたい私はこの容姿だ。まず、この眼鏡! これがイケてない。それに髪型も小学生のときからほとんど変わっていない。さすがにオカッパではないけれど、限りなくそれに近い。それにスタイルも……たぶんよくない。だから流行の服なんか着ても似合うわけない。

 はぁ……。

 ため息をついた私に、つんつんと清水くんが腕を突っついてきた。
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