HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
「…………?」

「呼ばれてるよ。ほら、数学のテスト」

 ひぃ! 昨日やったテストがもう返ってくるとは!?

 私は渋々立ち上がりのろのろと教壇の前に出る。

「高橋、……次は頑張れよ」

 その言葉で点数がかなり悪いことが解答用紙の赤字を見なくてもわかってしまった。何かが胸の中にうっとこみ上げてきてこらえるのが辛い。

 そして受け取った私の目に飛び込んできたのは28という赤い数字と数えるほどしかない丸……。

 自分の席に戻りながら、唇を噛んで更にこみ上げてくるものを懸命に押しとどめようとしたが、腰を下ろした途端視界がうるんだ。

「どうだった? ん? ……にじゅう」

 私は慌てて解答用紙を裏返して机の上に伏せた。一度だけキッと隣のソイツ睨んで自分もその解答用紙の上に突っ伏した。



 ――……くやしいっ!



 今までこんなに悪い点数を取ったことがなかった。涙が勝手にあふれてくる。

 だがしかし。

 ここで気がついたのは眼鏡が邪魔だということだ。突っ伏したところまではよかったが、このままでは眼鏡に水溜りができてしまう。……というか、既にできているというべきか。

 私は窓のほうに首を捻じ曲げ、顔を少しだけ上げて眼鏡を取った。もう授業などどうでもよかった。眼鏡を乱暴に机の端に置いてまた突っ伏した。

 朝、あんなに浮かれていた私は本当にバカだ。

 恋だの愛だのに惑わされてはいけない。そんなものに心を奪われて、いつまでもこの小さな世界から抜け出せないのは嫌なのだ。

 私はこんな点数を取った自分が許せなかった。次こそは絶対挽回してやる!
< 67 / 164 >

この作品をシェア

pagetop