HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
「高橋さーん! ぐふっ」
と、清水くんと入れ違いで現れたのは同じクラスの高梨(たかなし)まゆみさんだった。「ぐふっ」というのは彼女の笑い声らしい。
「清水くんと仲いいんだね。隣の席になってから?」
高梨さんは屈託のない笑顔で話しかけてきた。彼女はクラスの中で唯一私に普通に話しかけてくる女子だ。長い髪を三つ編にして両脇に垂らしているが、真面目そうな容姿とは裏腹に親しみやすいひょうきん者で、男女問わず気軽に絡む人が多い。
私は彼女の問いにぎこちなく頷いた。
「そうなんだ! 清水くんって授業中寝てばかりじゃない?」
――え?
少なくとも私は隣の席になってからの一週間で彼が居眠りするのを見たことがない。
「私は寝てるの見たことない」
「ホント? 私が隣の席になったときは一日中ずーっと寝てたよ。だからあまり話したことないんだ」
高梨さんはそう言って「ぎゃは」と笑った。たぶん彼女はしゃべらなければものすごく大人っぽい美人だと思うが、しゃべっていなければ口を開けてぼーっとしている人なので、そういう顔を見ることができるのはまれだった。
私は高梨さんの笑う顔につられて思わず笑ってしまった。周りを明るい雰囲気にさせる不思議な力を持った人だなと思う。
「ま、清水くんはカッコいいけど私のタイプじゃないからな~」
「高梨さんってどういうタイプが好きなの?」
つい、余計なことが口から出た。
でも彼女は真剣に考える顔をしてうーんと唸った。そして考えた末の答えは
「私ね、マッチョ系が好きなんだよね。熊みたいに身体が大きい人とか」
だった。つくづく世の中にはいろいろなタイプの人がいるものだと思う。
「高橋さんは?」
――え!? わ、私……?
なんと答えてよいのかわからなかった。そもそも何日か前まで好きな人すらいなかったのだし。
と、清水くんと入れ違いで現れたのは同じクラスの高梨(たかなし)まゆみさんだった。「ぐふっ」というのは彼女の笑い声らしい。
「清水くんと仲いいんだね。隣の席になってから?」
高梨さんは屈託のない笑顔で話しかけてきた。彼女はクラスの中で唯一私に普通に話しかけてくる女子だ。長い髪を三つ編にして両脇に垂らしているが、真面目そうな容姿とは裏腹に親しみやすいひょうきん者で、男女問わず気軽に絡む人が多い。
私は彼女の問いにぎこちなく頷いた。
「そうなんだ! 清水くんって授業中寝てばかりじゃない?」
――え?
少なくとも私は隣の席になってからの一週間で彼が居眠りするのを見たことがない。
「私は寝てるの見たことない」
「ホント? 私が隣の席になったときは一日中ずーっと寝てたよ。だからあまり話したことないんだ」
高梨さんはそう言って「ぎゃは」と笑った。たぶん彼女はしゃべらなければものすごく大人っぽい美人だと思うが、しゃべっていなければ口を開けてぼーっとしている人なので、そういう顔を見ることができるのはまれだった。
私は高梨さんの笑う顔につられて思わず笑ってしまった。周りを明るい雰囲気にさせる不思議な力を持った人だなと思う。
「ま、清水くんはカッコいいけど私のタイプじゃないからな~」
「高梨さんってどういうタイプが好きなの?」
つい、余計なことが口から出た。
でも彼女は真剣に考える顔をしてうーんと唸った。そして考えた末の答えは
「私ね、マッチョ系が好きなんだよね。熊みたいに身体が大きい人とか」
だった。つくづく世の中にはいろいろなタイプの人がいるものだと思う。
「高橋さんは?」
――え!? わ、私……?
なんと答えてよいのかわからなかった。そもそも何日か前まで好きな人すらいなかったのだし。