HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
「わ、私は……え、えーと……頭のいい人、かな?」

 適当に思いついたことを言ってみた。

 高梨さんはとても感心したような表情になって何度も頷いた。

「わかるー! 高橋さんってそういう人好きそうだもんね」

 ――そ、そうかな?

「真面目な人好きそうだもん」

「そうかも」

「清水くんみたいな人は苦手っぽい」

「そうかも」

 ――……って、えええええ!?

「あの人、頭はいいかもしれないけど全然真面目じゃないからな~。授業はほとんど聞いてないし、女の子はつまみ食いばっかりしてるし」



 ――つまみ食い……



「ま、でも彼は相当面食いっぽいから私には関係ない話なんだけどね」



 ――面食い……



 そうだよね。私にも全然関係ない話なんだ。

 胸のどこかに棘が刺さったようだった。チクチクと痛いがなかなか取れない。そんな痛みが私をしばらく苛んだ。

 高梨さんは普段から表情の乏しい私の微妙な変化には気がつかなかったようで、別のクラスの友達に声をかけられ忙しそうに去っていった。

 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

 スカートのポケットに手を突っ込んでみる。指にカサカサと小さな封筒の感触。結局捨てることはできなかった。

「……はぁ」

 小さくため息をついて私は図書室を後にした。
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