HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
#10 いきなり、ハッピーエンド(仮)です。
 清水くんが数学を教えてくれると言った土曜日まで、私はとにかくいつでもどこでも襲ってくる不安と戦っていた。

 気を抜くと口から不安が何かの形になって飛び出てきそうだった。

 こんなときどうしたらいいのかを誰かに相談したかった。英理子さんの顔が浮かんだが、あいにく連絡先を知らない。やはりケータイがないのは不便だな、と思う。

 よっぽど母親に相談しようかと思ったが、またあれこれ勘ぐられるのが目に見えているのでやめた。それに英理子さんももう少し後でって言ってたし。どうしてなのかはわからないけど……。

 しかも金曜の放課後は英理子さんのお迎えがなかった。きっと彼氏さんを迎えに行かなくてもいい日なのだろう。

 長い一日だったが、何とか一人でやり過ごすことに成功した。帰宅する頃にはもう精根尽き果てて抜け殻のようになっていたけれども。

 だが、勝負は土曜日なのだ。

 そして、ついにその日、その時がやってきた。
< 75 / 164 >

この作品をシェア

pagetop