HAPPY CLOVER 1-好きになる理由-
 清水くんは結局また階段を上り、さっき勉強していたテーブルへ戻った。

「眼鏡返して」

 私は隣のソイツを睨みながら手のひらを差し出す。

「まださっきの続きを聞いてないからダメ」

 隣に座っているのでかろうじて清水くんの顔は見える。でもやっぱりぼんやりしている。また視力下がったかな?



「俺のこと、嫌いじゃないんだよね?」



 ――ぎゃっ! ど、どうすればいいの?



 私は顔をそむけて目を閉じた。もう、どうにでもなれ!

 ゆっくりとぎこちなく首を下に振る。



「じゃあ、……好き?」



 ――そ、そ、それは……



 耳まで真っ赤になっていると思いながら、もう一度首を真っ直ぐ下に振った。

 クスッと隣から笑う声が聞こえた。もう穴があったら入りたい。できれば埋めてほしいくらいだ。

「眼鏡、返すよ」

 私の前に眼鏡がコトンと置かれた。急いで装着する。

「眼鏡取ったほうがかわいいけど」

 隣を見ると怖いくらいの笑顔で清水くんが私を見ていた。その顔でかわいいと言われても複雑だ。

「無理しなくていいよ。そんなお世辞」

 私は小さくため息をついて言った。そりゃ嬉しいけど、私はこれでも一応身の丈をわきまえているつもりだ。

 でも清水くんは不思議そうな顔をした。
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