劣情
passion
「これはなんだ?」
渡された資料にチラッと視線をやった男が、緊張した面持ちでデスク前に立つ新入社員に冷たい声を投げかける。
「企画書を上げろと言ったよな。誰が学生気分のレポートを出せなんて言った?」
冷酷な視線を新入社員に向けて、資料をデスク越しに叩き返す。
「やり直し」
資料がフロアの床に散らばっても気にもせず、話は終わりだと言わんばかりにデスクに置かれたパソコンに視線を向ける男。
慌てて資料を掻き集める新入社員の男の子に、フロア中が同情する。
掻き集めた資料を抱えて頭を下げ自分のデスクに戻っても、それに視線も向けない冷酷な男は、氷の男と呼ばれるほど社内では有名で。