もっと…もっと…
若女将は大変言いにくそうに、言葉を濁した。
「?」
「……もしかしたらご友人様方は“血水の洞窟”へ行かれたのかもしれません。」
「チスイの洞窟?」
俺と彼女は視線を交わし、首を傾げた。
「はい。昼間その話を聞かれましたので……。」
「それはこの近くなんでしょうか?」
「この旅館から2キロほど歩いたところにあります。ただ周りは木で覆い茂ってますので、暗い中見つけるのは難しいかもしれません。」
少し考えてから、俺は若女将に洞窟までの簡単な行き方を聞いた。
「優奈(ユウナ)、行こう。」
「うん」
お気をつけて、その言葉を背に受けて、俺たちは旅館を出た。