出会いから付き合うまで。
きっかけ
大学に入って二年目の九月、バイトをしようと思った。
ポストを何気なく開くと、そのチラシが入っていた。
二〇〇八年十月四日オープン!
そのチラシには黄色い地色に躍るような真っ赤な文字でそう書かれてあった。よくよく見ると、お好み屋さんのオープン記事だった。オープンにあたってバイトを募集する、と言う内容だ。そのチラシを見た瞬間に、あたしはそこでバイトをする決心をした。電話するまでそう時間はかからなかった。何気ない素振りで受話器を持っていた。
「それじゃ、自己紹介をお願いします」
副店長の田子池さんに言われ、あたしは名前を名乗った。
「あっ、更科です。よろしくお願いします」
すると、田子池さんの横で控え目に座っていた男の子が無表情に名乗った。
「草加です。よろしくお願いします」
あたしは無愛想な人だな、と思った。それが彼に対するあたしの第一印象。初めての出会いは、無味乾燥なものだった。
一焼堂のオープン前。あたしは一焼堂の社長専用個室でメニューを作成していた。真ん中に鉄板を配したテーブルが入り口の前に一つ、少し離れた奥の方にもう一つ。あたしは入り口付近のテーブルに座っていた。お座敷だから正座を崩した格好だ。そこへ田子池さんがニコリとも笑わない男の子を連れてきたのだ。男の子の名前は草加君。その時のあたしにはあまり興味がなかった。人見知りしそうだな、と言う思いはあったけれど別段それ以外の感情は抱かなかった。事実、彼はその様子であった。
スタッフルームにて挨拶を交わした後、あたし達は会話を交わすことはなかった。シフトが重ならない、と言う事もあるかもしれない。だけど、それ以上に興味をそそられなかった、と言うのもあった。別にバイト先で仲良しな人を見つけようなんて思ってなかったし、今もその考えは変わってない。話すことといえば、挨拶程度。おはようございます、お疲れ様です。その程度の仲だった。
だけど、あの日、彼に対するあたしの目が変わった。
初めて。
初めて彼の笑顔を見たのだ。
ポストを何気なく開くと、そのチラシが入っていた。
二〇〇八年十月四日オープン!
そのチラシには黄色い地色に躍るような真っ赤な文字でそう書かれてあった。よくよく見ると、お好み屋さんのオープン記事だった。オープンにあたってバイトを募集する、と言う内容だ。そのチラシを見た瞬間に、あたしはそこでバイトをする決心をした。電話するまでそう時間はかからなかった。何気ない素振りで受話器を持っていた。
「それじゃ、自己紹介をお願いします」
副店長の田子池さんに言われ、あたしは名前を名乗った。
「あっ、更科です。よろしくお願いします」
すると、田子池さんの横で控え目に座っていた男の子が無表情に名乗った。
「草加です。よろしくお願いします」
あたしは無愛想な人だな、と思った。それが彼に対するあたしの第一印象。初めての出会いは、無味乾燥なものだった。
一焼堂のオープン前。あたしは一焼堂の社長専用個室でメニューを作成していた。真ん中に鉄板を配したテーブルが入り口の前に一つ、少し離れた奥の方にもう一つ。あたしは入り口付近のテーブルに座っていた。お座敷だから正座を崩した格好だ。そこへ田子池さんがニコリとも笑わない男の子を連れてきたのだ。男の子の名前は草加君。その時のあたしにはあまり興味がなかった。人見知りしそうだな、と言う思いはあったけれど別段それ以外の感情は抱かなかった。事実、彼はその様子であった。
スタッフルームにて挨拶を交わした後、あたし達は会話を交わすことはなかった。シフトが重ならない、と言う事もあるかもしれない。だけど、それ以上に興味をそそられなかった、と言うのもあった。別にバイト先で仲良しな人を見つけようなんて思ってなかったし、今もその考えは変わってない。話すことといえば、挨拶程度。おはようございます、お疲れ様です。その程度の仲だった。
だけど、あの日、彼に対するあたしの目が変わった。
初めて。
初めて彼の笑顔を見たのだ。
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