出会いから付き合うまで。
 息を吐いてみると視界がぼやけてきた。目じりに熱いものが込み上げる。ヤバイと思って、草加君に背中を向けた。え? どうしたの? そう言って草加君が覗き込んでくる。咄嗟に隠したけれど、隠し切れなくて。目に溜まった涙を見られてしまった。
「何で泣くの?」
「いや……あの…………」
「ん?」
「…………嬉しすぎて。あたし、自分から言うの初めてだから。余計に」
 そう言ったら、草加君があたしの頭を撫でてくれて、抱き締めてくれた。彼の温もりがあたしの体の中に広がって、心が落ち着いていく。
 その後話しをしていたら二十五時を回ってしまった。帰らないといけない、という話になって草加君が徐に、
「ちょっと、目を瞑って」
 と言った。あたしは言われるがままに目を瞑った。唇に柔らかいものが触れる。心臓が一つ大きく脈打った。これって、唇と唇が……。顔から耳にかけて火照って紅潮するのがわかる。
 一瞬で離れて、五秒後にやっと理解した。
「ちょっと、今の……」
 信じられなかった。ついさっき付き合うってことになったばかりなのに、もう接吻するなんて。草加君って、意外と積極的なんだ。
 あたしは恥ずかしさのあまり暫く硬直していた。草加君の、もう帰ろうの声に我に返る。
 その日は家に着いても、どうしても接吻のことが頭から離れなかった。あんな事、初めてだったから。

 それからあたしと草加君は、正式に付き合うことになった。

 後日、草加君から、「ご飯食べに来るってなってたから、その時に言うつもりだった」と聞かされた。
 でも、自分から言って本当に良かった。
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