Steady
私の言葉に

母親の目が丸くなる。


それまで広げていた本を

ぱたんと閉じると、

私の目を真っ直ぐにみて

口を開いた。


「敦くん、て……。

 あの敦くん?」


母親の問いに私が大きく頷く。


「あの敦。小学校の時に

 引っ越しちゃったあの敦。

 同窓会で再会して

 番号交換したんだけど、

 敦が今日ウチに来たいって」


それまで仕事で

疲れきっていた母親の表情が

ぱっと花開いたように

明るくなる。


「敦くんがウチに来てくれるの?

 まぁ嬉しいわ!

 敦くんが来る前に

 ちゃんと準備しておかなくっちゃ」


そう言うなり母親は

椅子から立ち上がると

いそいそとキッチンへ向かう。





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