Steady
軽くスキップをするような

軽やかな足取りで、

準備を済ませた母親が

椅子に座ろうとした時だった。


来客を知らせる

インターホンが部屋に鳴り響く。


「あら、敦くんかしら」


声を弾ませて言う母親に

私は少し頷くと、

「私、出るから」

とだけ伝えて玄関へと向かった。


はい、と訊ねる私の声に

かぶせるように

ドアの向こう側から声が届く。


「俺、敦」


久し振りのこのやり取りに

なんだか小恥ずかしくなる。


小学生だったあの頃も、

敦とこんなやり取りして

ドアを開けたっけ。


ふふっと笑ってから

私はゆっくりとドアを開ける。


「よう、彩加。

 急に悪いな。なんか

 彩加んチが恋しくなってさ」


にかっと笑みを浮かべる

その姿は、

あの頃の敦を彷彿とさせた。





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