Steady
無言で呼ぶ敦を見て、

私の身体に緊張が走る。


「へ、変なことしないでよ」


「しねーよ、大丈夫だから。

 彩加、早くこっち来いよ」


それまでと違い

一切笑顔を見せず真顔で言う敦に、

私はほんの少しだけ警戒心を解く。


ただ、全てを信用した

ワケではないけれど。


ゆっくりと敦が横たわるベッドに

近付く。


いつも使っている

自分のベッドへ行くことが

こんなにも勇気がいるなんて。


ベッドの前に立つと

私は端っこにちょこんと座った。


「……来たけど、

 確認したいものって何よ?」


敦の顔をあまり見ないように

少しだけ振り返りながら訊ねる。


頭では敦のペースにのまれない様に

意識しているはずなのに、

心ではこのシチュエーションに

高まってしまっているようだ。





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