Steady
10数年ずっと買い換えずに

使っていたベッド。


細かい傷がいたるところに

あるのは分かっていたけれど、

まさかその中に

こんな傷が刻まれていたなんて

知らなかった。


「よかった、彩加が

 まだこのベッド使ってて」


そう言う敦の顔は

あの時の笑顔そのまま。


心の底からホッと安心する

ふんわりとした笑顔。


「……敦が、書いたの?」


私の問いかけに敦がこくんと頷く。


「ここで2人寝っ転がってる時にさ、

 いつの間にか彩加が爆睡しちって。

 彩加にばれないように

 心臓バクバクしながら

 これ彫ったんだよ」


懐かしい、と呟きながら

敦はその傷を愛しそうに

指で撫でる。


その可愛らしい姿に、

私もまたその傷を見つめる。





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