Steady
結局、それ以上

何も訊くことができず、

敦に引かれるまま

電車に乗り込んだ。


車内では

あのおしゃべりな敦が

全く一言も話すことなく、

ガタンゴトンと

電車の動く音だけが

私たちの間に

一定のリズムを刻んでいた。


これからどこまで

連れて行かれるのだろうか。


普段、大学へ通う以外

滅多に外出しない私には、

今、電車がどの方向へ

動いているのかも

わからないでいた。


ただただ緊張と不安で

胸がどんどん高鳴っていく。


ふと隣に座る敦へ目を向ける。


敦の手には私の番号が

入っている携帯電話。


「ねぇ、敦」



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