Steady
なんでこの街に

こんなにも人が

集まってくるのだろう。


行き交う人に

揉みくちゃにされながら、

のろのろと歩かなくては

いけないこの状況で

どうしてみんな笑顔なんだろう。


自分のペースなんて

あったもんじゃない。


私にとっては

ただただ息苦しいだけ。


それなのに周りの誰もが

本当に楽しそうに笑いながら

歩いているのだ。


ここからは見えないけれど、

きっと敦も周りと

一緒なんだろう。


「敦、私ちょっと休みたい。

 喉も渇いたし」


握られている手を

思いっきり引っ張って

大声で叫ぶ。


こんな澱んだ空気に

こんな会話じゃ、

喉が潰れてしまいそうだ。


もう早く

このごみごみした場所から

抜け出したい。


そんな私の思いを

感じ取ったのか

敦は私をちらりと見て、

「じゃ、ここでお茶しようぜ」

と目の前に見える店を指差した。




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