Steady
優の口からあんな台詞が

出てくるなんて。


その瞬間、

敦と優の姿が重なって映った。


重なって、というよりも

2人の姿が全く同じに

見えてしまい、

目の前にいるのが

本当に優なのか、

それとも敦なのか

分からなくなってしまった。


でも、そう感じたのは

その一瞬だけで、

優はいつものふんわりとした

甘い笑顔を見せてくれた。


やっぱり会わなきゃよかった。


あの時、強引にでも

優に握られた手を

振り解けばよかった。


そう思ったって、もう遅いのに。


心の叫びにも似たような

深い溜め息が口から漏れる。


その時だった。


バッグの中にしまっていた

携帯電話が鳴り始めた。


私はそれを手早く取り出すと、

通話ボタンを押し重い口を開いた。






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