Steady

口を開きかけた瞬間、

それまで黙っていた

敦の声が飛んできた。


「彩加にとって、

　……彩加の大切なヤツは

　誰なんだ。

　俺、か？

　でも、こんなに軽い男じゃ、

　彩加は嫌だろうな。

　渋谷に行った時に

　そんな感じだったし。

　やっぱり彩加には、

　そいつ……優の方が

　お似合いかもしれねーな。

　優は俺とは違って

　すっげー優しいみたいだから」


僻みにも似たことを言う敦は

私と目を合わせることなく、

影を落としていた。


それとは正反対に

優は私へ目を向けると

ふわりと笑みを見せて

こう口にした。


「まだそうかは

　分からないよ、敦。

　彩加ちゃんが出した答えを

　訊くまでは……」


優の笑顔を見るたび、

私の胸を締め付ける。


こんな優柔不断で厄介な私に、

そんな優しい笑顔を

見せないで欲しい。


静かにゆっくりと息を吐くと、

私は意を決して

想いを吐き出し始めた。